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退職給付金制度とは?もらえるお金の種類・条件・申請方法をわかりやすく解説


退職給付金制度とは何を指すのか、失業手当・傷病手当金・会社の退職金との違いをわかりやすく解説します。退職後にもらえるお金の種類、受給条件、金額、申請方法、民間サポートを利用する際の注意点まで紹介します。

「退職給付金制度を使えば、退職後に数百万円もらえる」

このような広告を見て、退職給付金制度について調べている方もいるのではないでしょうか。

結論からお伝えすると、一般の会社員を対象とした「退職給付金制度」という名前の公的制度が、一つ存在するわけではありません。

一般には、退職後に利用できる失業手当や傷病手当金、会社から支払われる退職金などをまとめて「退職給付金」と表現しているケースがあります。

どの制度を指しているのかは、広告やサービスによってバラバラです。

名前だけ見ると、退職すれば誰でもまとまったお金をもらえそうに感じます。そんなうまい話あるんか。まず制度名の確認が必要です。

この記事では、退職給付金制度という言葉の意味や、退職後にもらえる可能性があるお金、受給条件、申請方法をわかりやすく解説します。

退職給付金制度とは?

退職給付金制度という言葉は、一般の会社員が利用できる一つの公的制度を指す正式名称ではありません。

主に次のいずれかの意味で使われています。

・会社から支払われる退職金制度
・雇用保険の失業手当
・健康保険の傷病手当金
・再就職手当などの雇用保険給付
・退職後に申請できる複数の制度をまとめた呼び方
・民間の退職給付申請サポートサービスの商品名

そのため、「退職給付金がもらえる」と案内された場合は、具体的にどの公的制度を指しているのか確認する必要があります。

失業手当と傷病手当金では、受給条件が正反対に近いからです。

失業手当は、すぐ働ける状態で求職活動をしている人が対象です。

一方、傷病手当金は、病気やケガによって働けない人を対象としています。

同じ人が同じ期間について、両方を満額受給することは原則としてできません。

退職給付金は国が用意している正式な制度?

一般の会社員向けに「退職給付金制度」という名称で一律に給付される国の制度はありません。

ただし、退職後の生活を支える公的制度は複数あります。

代表的なものは、雇用保険の基本手当、いわゆる失業手当です。

ハローワークは、基本手当について、離職した人が生活の心配をせずに仕事を探し、早期に再就職するための給付と案内しています。(⁠ハローワーク)

また、病気やケガで働けない場合には、健康保険の傷病手当金を退職後も継続して受けられる可能性があります。

傷病手当金は、条件を満たした場合に支給開始日から通算1年6か月まで受給できます。(⁠きょうかいけんぽう)

つまり、「退職給付金」という一つの制度があるのではなく、その人の退職理由や健康状態に応じて、利用できる制度が変わるということです。

退職後にもらえる可能性がある給付金・手当

退職後に受け取れる可能性がある主なお金は、次のとおりです。

1.失業手当
2.傷病手当金
3.再就職手当
4.会社の退職金
5.公的年金
6.未払い賃金や有給休暇に関する支払い

順番に見ていきましょう。

失業手当|働ける状態で仕事を探す人向け

失業手当は、雇用保険に加入していた人が退職し、再就職を目指して求職活動をするときに支給される給付です。

正式名称は「雇用保険の基本手当」です。

受給するには、主に次の条件を満たす必要があります。

・離職前に一定期間、雇用保険へ加入している
・現在、職業に就いていない
・就職する意思がある
・すぐ働ける状態である
・積極的に求職活動をしている
・ハローワークで求職申込みをしている

一般的な自己都合退職の場合は、原則として離職前2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算12か月以上必要です。

会社の倒産や解雇などに該当する場合は、離職前1年間に通算6か月以上の被保険者期間があれば、受給できる可能性があります。

受給できる日数は、離職理由や年齢、雇用保険の加入期間などによって変わります。

一般の離職者は90日から150日、会社都合退職などに該当する人は90日から330日が目安です。就職困難者は最大360日となる場合があります。(⁠ハローワーク)

傷病手当金|病気やケガで働けない人向け

傷病手当金は、業務外の病気やケガによって働けず、会社から十分な給与を受け取れない場合に、健康保険から支給されるお金です。

主な受給条件は次のとおりです。

・業務外の病気やケガで療養している
・療養のため仕事に就けない
・連続3日間の待期期間を含め、4日以上休んでいる
・休業中に給与が支払われていない、または給与が傷病手当金より少ない

支給額は、原則として支給開始前12か月間の平均標準報酬月額を30で割り、3分の2を掛けた金額です。

ざっくりいうと、給与の約3分の2が目安になります。

傷病手当金は、支給開始日から通算1年6か月まで受給可能です。(⁠きょうかいけんぽう)

退職後も受給を続けるには、主に次の条件を満たす必要があります。

・退職日までに、健康保険の被保険者期間が継続して1年以上ある
・退職日時点で傷病手当金を受けている、または受給条件を満たしている
・退職後も同じ病気やケガによって働けない状態が続いている
・退職日に出勤していない

退職後に任意継続へ加入すれば、新たに傷病手当金を申請できるわけではありません。

任意継続加入後に発生した病気やケガについては、原則として傷病手当金の対象外です。(⁠きょうかいけんぽう)

再就職手当|早く再就職した人向け

再就職手当は、失業手当の受給資格がある人が、所定給付日数を一定以上残して早期に再就職した場合に支給される給付です。

「失業手当を全部もらってから就職したほうが得」とは限りません。

条件を満たして早く就職すれば、残っている基本手当の一部をまとめて受け取れる可能性があります。

主な条件は次のとおりです。

・7日間の待期期間が終わった後に就職している
・基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上ある
・1年を超えて勤務する見込みがある
・原則として雇用保険に加入する
・前の会社や密接な関係にある会社への再就職ではない
・過去3年以内に再就職手当などを受けていない

支給残日数が所定給付日数の3分の2以上ある場合は70%、3分の1以上の場合は60%を掛けて計算するのが基本です。

会社の退職金|会社の制度によって支給される

会社の退職金は、雇用保険や健康保険から支払われる公的給付ではありません。

会社が設けている退職金制度に基づいて支払われます。

退職金制度を設けるかどうかは、原則として会社の判断です。

法律上、すべての会社に退職金の支払いが義務づけられているわけではありません。

退職金の有無や金額、支給時期は、次の書類で確認できます。

・就業規則
・退職金規程
・雇用契約書
・労働条件通知書
・企業年金制度の案内

勤続年数が短い場合や、懲戒解雇など特定の退職理由では、退職金が支給されないこともあります。

公的年金|年齢や加入状況によって受け取れる

退職後、一定の年齢に達している人は、老齢年金を受け取れる可能性があります。

また、病気やケガによって生活や仕事に大きな制限がある場合は、障害年金の対象になることもあります。

ただし、退職後に傷病手当金と老齢厚生年金などを同時に受けられる場合は、傷病手当金の支給額が調整されることがあります。

老齢退職年金の日額が傷病手当金の日額より少ない場合は、差額が支給される仕組みです。(⁠きょうかいけんぽう)

退職給付金はいくらもらえる?

退職後にもらえる金額は、利用する制度によって大きく異なります。

「退職すれば必ず300万円」「誰でも最大数百万円」というように、一律の金額が決まっているわけではありません。

主な制度の金額の考え方は次のとおりです。

失業手当:
離職前6か月間の賃金をもとに計算した基本手当日額×所定給付日数

傷病手当金:
支給開始前12か月間の平均標準報酬月額÷30×3分の2×支給対象日数

再就職手当:
基本手当日額×支給残日数×60%または70%

会社の退職金:
会社の退職金規程に基づいて計算

複数の制度を長期間受給した場合、合計額が数百万円になることはあります。

ただし、それは全員が一括で数百万円を受け取れるという意味ではありません。

たとえば、傷病手当金を1年6か月近く受け、その後に回復して失業手当を受けるケースでは、合計額が大きくなる可能性があります。

一方、健康な状態で自己都合退職し、雇用保険の加入期間が短い人は、傷病手当金の対象にはならず、失業手当の給付日数も90日程度になることがあります。

退職給付金制度を利用できる人の条件

利用できる制度は、退職時の状況によって変わります。

すぐに働ける人

すぐに働く意思と能力があり、求職活動をする人は、失業手当の対象になる可能性があります。

ハローワークで求職申込みをし、定期的に失業認定を受けます。

病気やケガで働けない人

病気やケガですぐに働けない場合は、失業手当ではなく、傷病手当金を検討します。

失業手当は「働ける人」が対象です。

傷病手当金は「働けない人」が対象です。

ここを逆に申請すると、制度の条件に合いません。

すでに転職先が決まっている人

退職時点ですでに次の勤務先が決まっている場合は、基本的に失業状態とはいえません。

そのため、失業手当を受けられない可能性があります。

ただし、受給資格決定後に早期就職した場合は、再就職手当の対象になることがあります。

雇用保険に入っていなかった人

雇用保険の基本手当や再就職手当を受けるには、一定期間の雇用保険加入が必要です。

自営業者やフリーランスなど、雇用保険に加入していなかった人は、原則として失業手当の対象になりません。

ただし、会社員として働いていた期間がある場合は、過去の加入期間を確認できることがあります。

退職給付金の申請方法

「退職給付金」という名前で、一つの窓口へまとめて申請するわけではありません。

制度ごとに申請先が異なります。

失業手当・再就職手当:
住所地を管轄するハローワーク

傷病手当金:
協会けんぽまたは加入していた健康保険組合

会社の退職金:
退職した会社

公的年金:
年金事務所または市区町村

それぞれの申請方法を確認しましょう。

失業手当を申請する流れ

失業手当の基本的な申請手順は次のとおりです。

1.会社から離職票を受け取る

2.住所地を管轄するハローワークへ行く

3.求職申込みをする

4.離職票などを提出する

5.受給資格の決定を受ける

6.7日間の待期期間を過ごす

7.雇用保険受給説明会へ参加する

8.求職活動を行う

9.失業認定を受ける

10.基本手当が振り込まれる

主な必要書類は次のとおりです。

・離職票-1
・離職票-2
・マイナンバーカードなどの本人確認書類
・本人名義の通帳またはキャッシュカード
・証明写真
・雇用保険被保険者証

傷病手当金を申請する流れ

傷病手当金の申請書は、本人だけで完成させるものではありません。

本人、会社、医師がそれぞれ必要な欄を記入します。

基本的な流れは次のとおりです。

1.医療機関を受診する

2.会社へ休職と傷病手当金の申請について連絡する

3.傷病手当金支給申請書を用意する

4.本人記入欄を記入する

5.会社に勤務状況と給与の証明を依頼する

6.医師に労務不能期間の証明を依頼する

7.協会けんぽまたは健康保険組合へ提出する

長期間休む場合は、1か月単位や給与の締め日ごとに申請する方法が一般的です。

退職給付金の申請サポートとは?

インターネット上には、失業手当や傷病手当金の申請を支援する「退職給付金サポート」「社会保険給付金サポート」などの民間サービスがあります。

主なサービス内容は次のとおりです。

・利用できる可能性がある制度の診断
・申請スケジュールの整理
・必要書類の案内
・医師や会社への伝え方のアドバイス
・退職前後の手続きに関する相談

公的制度への申請自体は、ハローワークや協会けんぽなどの窓口で、本人が無料で行えます。

民間サービスの料金は、申請手数料ではなく、情報提供やサポートへの料金です。

ここは分けて考える必要があります。

退職給付金サポートは怪しい?利用前の注意点

退職給付金サポートのすべてが不正なサービスというわけではありません。

ただし、広告表現や契約内容をよく確認する必要があります。

特に、次のような案内には注意しましょう。

・誰でも必ず受給できると断言している
・必ず数百万円もらえると案内している
・制度名や申請先を説明しない
・料金総額を契約前に明示しない
・解約や返金条件がわかりにくい
・医師へ虚偽の症状を伝えるよう勧める
・実際には働けるのに、働けないと申請するよう勧める
・会社やハローワークへ事実と異なる説明をするよう求める

失業手当や傷病手当金の不正受給は、受け取った金額を返せば終わりとは限りません。

追加で納付を求められたり、悪質な場合は処罰の対象になったりする可能性があります。

「申請が通る言い方を教えます」と「事実と異なる申請を勧めます」は別物です。

サポートを利用する場合でも、申請内容は必ず事実に基づいて作成しましょう。

退職給付金サポートを利用する前に確認したいこと

契約前に、最低限次の項目を確認してください。

・具体的にどの制度を申請するのか
・自分がその制度の条件を満たす根拠
・受給見込み額の計算根拠
・料金の総額
・追加料金の有無
・途中解約の条件
・返金条件
・サポート期間
・申請が不支給になった場合の対応
・運営会社の名称、住所、連絡先
・社会保険労務士や弁護士が関与する範囲

「最大金額」ではなく、自分の給与、加入期間、健康状態をもとにした現実的な見込み額を確認しましょう。

最大額だけを見せられても、実際に受け取れる金額とは限りません。

退職給付金に税金はかかる?

税金の扱いも、受け取るお金の種類によって異なります。

失業手当:
非課税

傷病手当金:
非課税

再就職手当:
非課税

会社の退職金:
退職所得として課税対象。ただし退職所得控除がある

失業手当や傷病手当金を受け取ったことだけを理由に、確定申告する必要は原則としてありません。

ただし、年の途中で退職して年末調整を受けていない場合や、副業所得がある場合などは、別の理由で確定申告が必要になることがあります。

退職給付金制度に関するよくある質問

退職給付金制度は本当にありますか?

一般の会社員が一律に利用できる「退職給付金制度」という名称の公的制度が、一つ存在するわけではありません。

一般には、失業手当、傷病手当金、再就職手当、会社の退職金などをまとめて表現する際に使われています。

案内を受けた場合は、具体的な制度名を確認してください。

退職すれば誰でも給付金をもらえますか?

誰でも必ずもらえるわけではありません。

失業手当には雇用保険の加入期間や求職活動の条件があり、傷病手当金には病気やケガで働けないなどの条件があります。

会社の退職金も、勤務先に退職金制度がなければ支給されません。

退職給付金は最大いくらもらえますか?

一律の最大額はありません。

給与、年齢、雇用保険の加入期間、退職理由、病気やケガの状態、会社の退職金規程などによって変わります。

複数の制度を長期間利用すれば合計額が数百万円になることはありますが、全員が同じ金額を受け取れるわけではありません。

失業手当と傷病手当金は両方もらえますか?

同じ期間に両方を受け取ることは原則としてできません。

失業手当は、すぐ働ける人が対象です。

傷病手当金は、病気やケガによって働けない人が対象です。

傷病手当金の受給後に回復し、その後求職活動を始めて失業手当を受けることはあります。

退職給付金の申請は自分でできますか?

失業手当や傷病手当金などの申請は、自分で行えます。

ハローワーク、協会けんぽ、健康保険組合などの窓口では、申請方法について無料で案内を受けられます。

手続きが複雑、体調が悪くて進められない、退職日による違いが不安という場合は、専門家や民間サポートを利用する選択肢もあります。

退職後に傷病手当金を申請できますか?

退職後に初めて病気やケガが発生した場合は、原則として対象になりません。

退職前から傷病手当金を受けている、または受給条件を満たしており、健康保険の加入期間などの条件を満たしている場合は、退職後も継続受給できる可能性があります。

退職給付金サポートへ相談すると会社にバレますか?

民間サービスへ相談しただけで、会社へ自動的に通知されるわけではありません。

ただし、傷病手当金の申請では会社による勤務状況と給与の証明が必要です。

退職前に申請する場合は、会社とのやり取りが発生します。

また、制度を利用するために虚偽の説明をすることは避けましょう。

まとめ|退職給付金という言葉ではなく具体的な制度名を確認しよう

退職給付金制度という名称の公的制度が、一般の会社員向けに一つ用意されているわけではありません。

主に、次のような制度やお金をまとめて「退職給付金」と表現しています。

・雇用保険の失業手当
・健康保険の傷病手当金
・雇用保険の再就職手当
・会社から支払われる退職金
・年金などの公的給付

利用できる制度は、退職理由、雇用保険の加入期間、健康状態、年齢などによって変わります。

すぐに働ける人は失業手当、病気やケガで働けない人は傷病手当金を検討するのが基本です。

「退職すれば誰でも数百万円もらえる」とは限りません。

退職給付金の案内を見たら、まず次の3点を確認しましょう。

・何という公的制度を申請するのか
・自分が受給条件を満たしているか
・見込み額の計算根拠は何か

退職日や申請の順番によって、利用できる制度が変わることもあります。

退職後に慌てないためにも、会社へ退職届を提出する前に、自分が利用できる制度を整理しておくことが大切です。

退職後にもらえる可能性があるお金を、一度整理しませんか?

失業手当、傷病手当金、再就職手当など、退職後に利用できる制度は一つではありません。

ただし、健康状態や退職理由によって、対象となる制度や申請の順番は変わります。

退職後に「先に確認しておけばよかった」とならないよう、退職前の段階で利用できる制度を確認しておきましょう。

監修者:和久田 典宏(わくだ のりひろ)
弁護士/未来創造弁護士法人

静岡県浜松市出身。司法試験合格後、弁護士として企業法務を中心に活動しています。

現在は、経営者との継続的な対話を通じて、契約書の作成・確認、事業上のリスク整理、トラブル予防などを支援。年間200通を超える契約書関連の依頼に対応し、法的なリスクを指摘するだけでなく、事業の実態やビジネスモデルを踏まえた実務的な提案を強みとしています。

主な所属・活動
・東京弁護士会 中小企業法律支援センター
・東京弁護士会 新進会員活動委員会
・日本弁護士連合会 法曹養成制度改革実現本部 広報チーム幹事

主なセミナー・講演実績
・日本M&Aセンター
・AZ-COM丸和・支援ネットワーク
・その他、企業・経営者向け講演多数